残業代が適正に支払われていないという事案が相当みられます。残業代の時効は2年です。
しかし、会社に就職中、請求するというのは現実的にはなかなか出来ないことで、退職後に
過去2年分を請求するというのが殆どのようです。会社が任意に支払わない場合、労働審判制度
を使うと殆どが従業員勝訴ということで審判がなされています。またそれでも解決しない場合は、
裁判も考えざるを得ません。
しかし、2年間だけしか請求できないというのは、会社に長く働いていた場合、時効とはいえ、
相当でないと考えられます。それで、時効で消滅した期間の残業代や慰謝料を不法行為構成で
請求した裁判もあります(広島高裁平成19年9月4日)。この判例は、不法行為に基づく損害賠償請求
を認めました。不法行為構成の場合、未払残業代があると知ったときから3年ということになりますので、
2年より1年間長く認められたものです。
このように不法行為構成とか、また時効中断構成等で2年より長く認められる可能性もあります。
労働契約法では、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない
場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と規定されています。
労働者本人は、「解雇」という認識がある場合であっても、実際には不本意ながら退職合意書に
サインしてしまったという場合、労働契約の合意解約を争うこともできる場合がありますので、ご相談下さい。
企業が従業員の配置の変更を行う場合に、同一の事業所内における変更を「配置転換」、勤務地
の変更も伴うことを「転勤」といい、両者をあわせて「配転」といわれています。配転命令が、
退職勧奨拒否に対する嫌がらせとしてなされるなど、不当な動機・目的をもってなされたものである
場合は、権利濫用にあたり無効となるとした判例もあります。
解雇するには30日前に予告する必要があります。まずは、使用者に対して、解雇の理由を
明らかにするように求めるべきです。
上司からの指示があれば残業代を支払うのは当然ですが、具体的な指示がなくとも黙示の
残業指示があったと認定されれば、労働時間となり残業代を支払わなければなりません。
紛争を避けるためには労働実益をきちんと把握し、いたずらに会社に残っていないか、指示が
ないのに残業をしないように等文書で通達を出すなどしておくのが望ましいと思われます。
労働者は所定労働時間に労務を提供する義務がありますから、その義務を果たさなければ
債務不履行になります。しかし、無断欠勤や遅刻を理由に解雇する際、使用者の解雇回避義務
の有無も解雇の正当性を判断する大きな理由になります。それで、労働者に、懲戒事由に
当たりうることを話し、再三反省も促したりしたが、それでも改善されない場合とか、その従業員を
解雇しなければ業務に支障が生じるような場合に解雇できると考えられます。
労働災害が発生した場合、使用者は、迅速に労働基準監督署に申告するなどのしかるべき
措置をとる必要があります。これらを怠ると、いわゆる「労災隠し」として、処罰を含めた厳正な
処分がなされます。また、労働条件や労働環境が劣悪であるために労働災害が生じた場合には、
使用者が直接責任を問われる場合もあります。
労働災害の発生を防ぐためには、日ごろから労働基準法等を順守する社内体制を整備しておく必要があります。
社員は、在職中当然に労働契約の付随義務として当然に守秘義務を負っていると考えられますので、
それに反して営業秘密を漏らさないよう、諸規定を整備し、誓約書を取っておくことが重要です。
これは社員に対し、機密保持義務を再認識させることができるメリットがあります。
競業行為とは、企業にとって営業に属する分野において、競争関係に立つおそれのある行為をいい、
同業他社就職行為、同業独立営業行為がほとんどです。退職後の競業については職業選択の自由が
ありますので、原則として問題がないということになります。それで、退職後の競業避止義務を契約で
定めておく必要があります。但し、これも無制限に認められるわけではありませんので、どの程度禁止
できるか、検討したうえで定める必要があります。
社員は、在職中でも退職後でも、労働契約の付随義務として当然に守秘義務を負っています。
不正競争防止法の保護が及ぶ「営業秘密」とは、「秘密として管理されている生産方法、販売方法
その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの」
をいいます。つまり、
営業秘密とは
①秘密管理性 ②有用性 ③非公知性
上記の①~③の要件を満たす必要があります(不正競争防止法2条6項)。
事後的な損害賠償請求は容易ではないので、事前の営業秘密漏洩防止(規定を整備したり、
誓約書を取ったり)をしておいた方がいいでしょう。